世界最古の社であり、酒神でもある大神神社のお膝元。古代よりの酒の聖地と伝わる三輪で、350年以上の歴史を誇る老舗蔵である。その蔵元は今西将之さん。急逝した父に代わって蔵を継いだのはまだ28歳の頃のこと。それからわずか5年で設備も人も蔵も刷新、一気に全国新酒鑑評会、金賞連続受賞蔵に躍り出た。ただ今、全国の日本酒ファンから熱い注目を浴びながら、平均年齢28歳の蔵人たちと、目指す「王道」をひたすらに醸している。
「大神神社のご神水と同じ水脈上に米を育て、その水で醸しています。だからこそ思うのです。僕らは本物の、王道をゆく酒造りをする」と。
その酒とは料理に寄り添い、知らぬ間に盃が進む酒がいい。「華やかモダンな酒でもインパクトの強いクラシックな酒でもない。真ん中の、王道の酒ですね」。
ポイントは酸にある。「酸を背骨に米の甘みと旨みで肉つきをする。球体をつくるイメージで醸します」。ふんわり、おだやかモダン・クラシックな“円の酒”。それは誰もが好きな酒だからどんな宴会にもあうし、贈り物にもはずれがない。家で毎晩飲んでも飽きがこない酒である。
酒造りはとことん丁寧にこだわり抜く。「工程は大手も零細も同じ。どこで酒質が変わるのか。効率と非効率のせめぎ合いです。だが僕らは一切、効率を無視。どれほど手間がかかろうと、各工程のパフォーマンスを最大限に上げることしか考えていません」。
僕、ではなく「僕らは」と語る。酒造りは「人」だと思う。渾身の情熱。醸す「人」が酒に出るのだと信じている。
「うちの蔵の一番の強みは社員力。若く、情熱的で、エネルギーにあふれ、とにかく真摯にうまい酒がつくりたいと願っています」。
5年がかりの設備投資を終えて、さらなる酒質の向上に燃えている。「これから、僕らの酒はもっともっと、うまくなりますよ」。
「大和路ショップ」オープンにも想いを寄せる。「奈良は清酒発祥の地。奈良酒なくして、今の日本酒は語れません。各酒造がこだわり醸した奈良酒の魅力をどんどん発信していただきたいですね」。